AT Sprint 製作記録 2003.5.18

<キットの概要>
このキットは、Steven Weber Kd1jv さんがホームページ上で50台限定で購入者を募集していたものです。たまたま見つけたのですが、迷わず予約しました。現在は既に売り切れの状態です。
ホームページの説明によれば、表面実装部品を使用しているので組立に経験があること、トラブルシューティングが自分自身でできる能力と、必要な計測器を保有していることなどが書かれていましたが、何とかなるだろうと何も考えませんでした。
由来はわかりませんが、このキットの名称は「AT Sprint」となっており、作者によれば、コンセプトは胸のポケットに入れてどこにでも持ち歩いて運用できるCWトランシーバーです。
このトランシーバーのすばらしいところは、「ALTOIDE Tin」サイズ、3バンド対応、エレキー内蔵、DDS VFO、送信出力4W、受信部はスーパー方式とサイズからは考えられない仕様となっているところです。

<主な仕様> (キットの資料から抜粋)
・40/30/20m 対応(フィルター基板交換方式)
・350Hz BW @-20dBv
・150KHzチューニングレンジ 100Hzステップ(by DDS)
・MSD >0.2μV
・受信電流 55mA 
・送信電流 520mAmax
・送信出力 4W @12V
・送信スプリアス -45dBcmax
・動作電圧範囲 5.5V~13.8V

<回路の特徴>
このトタンシーバーは、日本の自作シーンではあまり見かけない大胆な発想の回路となっています。さすがアメリカです。
・アナログスイッチを使用したミキサー回路(74HC4053)
・携帯電話用音声ALC ICを使用したAGC
・ロジックICを使用した送信ドライブ回路(74HC02)
・小型FETを3パラで使用したE級ファイナル
・アナデバ製DDSを使用した、受信局発、送信OSCによるシンプルな構成
・アトメル製マイコンAVR2313を使用したDDS制御、エレキー
・エレキーは、メモリー、アイアムピック機能、メッセージメモリー機能あり
・全ての操作は4つのキースイッチとパドルによって行う
・入出力端子は、ANT、パドル、ヘッドホーン、電源の4つのみ

<キットの内容>

今までこの手のキットを組んだことがないので比較ができませんが、部品を袋詰めした、いわゆるバラキットと言われるものだと思います。

ICや抵抗、コンデンサは静電対策された袋に入れられいた。
抵抗値は部品に捺印されていたが、コンデンサは何も捺印されておらず、容量毎にテーピングに色マジックで識別されていた。大変な苦労である。

まさかケースまでついているとは思わなかった。アメリカでは「ALTOIDS」というお菓子のケースに組み込むのがはやっているようであるが、それと同じサイズの缶にQRP MINTS 「ZOMBOIDS」とわざわざ作っているところが憎らしい。
残念ながら、穴加工はしていない。

マニュアルは、仕様、製作方法、テスト方法などを書いた8ページものと、変更などを追加した4ページものと実にシンプル。
トラブルシューティングの項はさらにシンプルで、99.9%が半田付け不良である書いてある。目視で検査し、わからない場合は「shotgun」と称する全ての部品を再加熱して半田付け直しを推奨している。
メールでのトラブルシューティングは時間がかかるだけだし、返事の内容も上記の内容しか対応できないとある。(厳しい!!)
どうしてもだめな場合は、$40で面倒を見てくれるらしい。

表面実装部品が、実装終了したところ。
ここまで約2時間掛かった。普通の倍以上の感覚である。最近富みにひどくなった老眼で部品の定数が読みにくいのと、自分で作った基板でないため部品を置く位置を探すのにだいぶ時間が掛かった。

全ての部品の実装が終了したところである。
さらに1時間掛かった。コイルを巻くのに結構手間取ってしまった。

実装終了後の裏面(表面?)である。XTALはこちら側につけるようになっている。
抵抗がつけられているが、メールで教えてもらった電源立ち上げ時にバースト信号が送信されてしまうのを防ぐプルアップ抵抗である。(マニュアルにはない)

ケースに実装した写真である。動作確認に約1時間、ケース実装に約1時間、全ての工程は約5時間で終了した。

トラブルは全くなかったわけではなく、まず、マイコンとオーディオ部分、IF段までは一発で動作したが、全く信号は受信されなかった。始めてのアナログスイッチICによるミキサーを疑ったが、半田付け以外なにもないのでマッチングトランスを再チェックしたところ、やはり配線間違いがあって、修正と同時に強力な信号が入ってきた。
次は、送信部であるが、ダミー抵抗をつないで試験するが、パワーメーターが全くふれない。回路構成はシンプルでゲートをON/OFFしてその出力をFETでスイッチしているだけである。
この時、FETスイッチのドレイン電源をTRでスイッチして加えているのであるが、電圧が異常に低かった。半田付けを疑ったが、なにをしもだめなため手持ちのトランジスタに交換し、動作開始。
パワーメーターがこぎみ良くふれ始めた。しかし、調整するところはないため、これで終了。パワーとして2W位はでているかなと言う感触。
当局のダミー抵抗+パワー計は校正していないため正確ではない。
受信音は、比較的良いがこのミキサー特有なのかヒュルヒュルというような高いノイズが多い。スペアナは持っていないが、PCのPSK31用ソフトで低周波の帯域を観測すると、CWの受信音の2、3倍の高調波も出ている。
イヤホンでは、非常に耳障りなので、組込まれているフィルタにコンデンサを追加して高周波をカットしたらだいぶましになった。
作者との事前のメールのやり取りでは、このアナログスイッチタイプのミキサーはSA612よりはるかに高耐入力であり、最初はSA612でやったが、結局は現状となったと言うことである。
どなたか、性能をチェックしてもらえませんか?
回路は、公開できないので連絡いただければお教えします。

驚いたことに低周波アンプはOPアンプでイヤホン専用思ったが、スピーカを接続したら十分に駆動できている。
Webで検索してデータを調べたら80mAも流せる高出力タイプのOPアンプが使用されていた。データによれば32オームまで負荷OKとあった。
実際に接続したのは8か16オームだと思うので仕様外使用である。現在全く問題は無い。このトランシーバーには音量コントロールがついておらずうるさいくらいである。

DDSは100Hzステップであり、少し使いづらい。初期周波数がアメリカバンドで7040になっているのも直したい。幸いなことに、マイコンがこの手の製品では珍しくアトメルであり、事前のメールのやり取りでAVRで良かった送ったらソースコードを送ってくれた。AVRのアセンブラは書けないが、初期周波数くらいは変更できるだろうと考えている。書きこみ用の端子も組込まれているのでBASICで書きなおしてしまう手もある。(いつになることやら)

その他、機能はたくさんあるが、なにせ4つのボタンを駆使するのでまだ全ての機能を使ってみていない。これから、ゆっくりと楽しんでみようと考えている。

マニュアルは、2つの間違いを見つけた。コンデンサのシルク印刷がダブっていたのと、FETの向きが逆になっていた。特に、被害は無かったが・・・。

受信感度は比較的よく、現用中のボ社製より感度はいいくらいである。選択度はボ社はCW用がないので比較できないが、こちらのほうが実用的であるという印象であることを報告しておく。